CP2・第一部

 名古屋市中区三の丸、愛知県警察本部。その庁舎内で高校生の男女が話している。
「藤枝くん、さっき下りてきた話なんだけど、子ども課員が転校することになったんだって」
 白襟のセーラー服を身につけた女子生徒が、もう一人の男子生徒に話しかけた。「藤枝くん」と呼ばれた男子生徒は少し驚いた様子を見せる。見せつつ、聞き返す。
「前例はないけど、どう取り扱うのかい?」
 対して少女は首を傾げるのみ。
「最低でも県警レベルで創設されれば解決なんだけどね、子ども警察を」
 呟くように少年が言い、そうだね、と少女は笑みを浮かべた。

* * *

「え、続けられるの!?」
 愛知県某所。長い黒髪を纏った少女は教官に当たる田上 康子ども課部会主任(警部)から知らせを受け、驚かずにはいられなかった。
「ああ。神奈川の地域部長が快く引き受けてくれるそうだ」
「良かった〜」
「安江さん、これに人生懸けてる感じだからねー」
「そう見えるの、横山くん?」
 隣にいた男子生徒がからかうように言い、少女は真剣に反応して彼の顔を下から覗き込む。取り乱したのは、今度は男子生徒の方だった。
「まあそう決まったということで、神奈川へ行く前の夏休み期間中は特別研修を受けてもらうことになった。まああれだ、万能プレーヤーになるためだ。八月からは県警本部の方に通ってもらうよ」
「はい、ありがとうございます」
「研修は『伝説の』あの二人に担当してもらえるそうだから」
「え、本当ですか!?」
 少女の瞳は一段と輝き始めた。